みぎ手になった左手
2012年 02月 07日
1月23日の雪降る寒い夜は最悪の日になってしまった。
帰宅早々のことだった。
連日の厳しい冷え込みに床暖房のスイッチを入れて温もりが逃げぬようにと
思いっきりドアを閉めた瞬間だった。
ぎゃぁ~~~っ!!
うっかり蝶番のところに置いたままの右手の指は悲鳴をあげた。
ぽたぽた・・と滴り落ちる暗赤色の血でフローリングが水玉模様になっていく。
恐る恐る見ると親指が人のもののようにグラリと揺らいでいる。
さらに爪は外れてがふんわり浮きあがり私のモノではない別の物体に見えた。
気がついたら救急車で運ばれ、慶応病院の緊急治療室の寝台の上だった。
外れてしまった爪は急がないと死んでしまうので即時に針と糸で縫い合わせられた。
しかも指は骨折。
2日後には手術台の人なり、指1本ごときとは思えないほどの大げさな手術が行われた。
折れた箇所をスクリューとボルトで固定したのだ。
人間の体は実によく構成されていて、どこかほんのちょっと悪くなると
大変な不自由を感じるものだ。
それが利き手の右手が使えないとなると鳥が翼を捥がれたようなもので
どんな些細な事にも不便を感じて歯がゆい。
ましてやパソコンは右手でマウスが使用できないので仕事にも支障を来たす。
おまけに何よりも「痛い!!」
痛みが遠のくまではたっぷり2週間はかかった。
しかし滅多に経験しないことを体験することとなった現状を無駄には出来ない。
痛いなんて言ってる場合でない。
翌日から左手が右手になるための特訓を始めた・・・というよりそうせざるを得ない。
まるで人の手のように思い通りいかない左手に歯がゆくて
気が付けば顔まで拍子をとりながら曲げているのに思わず笑ってしまうほど。
それでもえらいもので左手は懸命に右手になろうと努力しているうちに
だんだん前から右手だったような風格を持ち出してきた。
どんなアクシデントも未知なるのものの絶好のチャンスだと思えば
苦痛は和らいでいくから不思議なものだ。
Photo.:Chiho Harada
HP:http://www.chihoharada.com/
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by chihoharada
| 2012-02-07 11:21